Case

和歌山県 紀の川市でイチジクを育てられている神德 泰孝さん。弊社と近畿大学生物理工学部、紀の川市役所が連携して取り組んでいるヒナイグリーン®を使ったイチジクの栽培試験にご協力いただいています。

ヒナイグリーンで果樹を元気に

和歌山県紀の川市では豊かな大地と穏やかな気候を活かして様々な野菜や果物の栽培が行われています。とくにモモ、カキ、イチゴ、キウイ、イチジク、ハッサクは全国・県内有数の生産量を誇っています。
このようにフルーツの栽培が盛んな紀の川市にある、紀の川市役所地域創生課のバックアップ、そして同市にある近畿大学生物理工学部の研究室の協力のもと、ヒナイグリーン®を用いた果樹の栽培試験が始まりました。主に野菜や水稲の栽培に使われてきたヒナイグリーン®が果樹の栽培にも効果があるのか、またその効果はどのようにして表れるのかを検証する試みです。第一弾で始まったイチジクの栽培試験について紹介します。

新しい技術を取り入れた農業に挑戦したい

神德農園を営まれている神德泰孝さんは4年前に勤めていた会社を定年退職されました。そして2016年からお父様の後を継ぐ形でイチジクの栽培を本格的にスタート。農業を始めるにあたって神德さんが心掛けられているのは、出来るだけ自分一人の力で栽培を行う「ひとり農業」。このモットーから日常的に作業を簡略化、効率化できるような新しい農業技術に目を光らせています。実際に水稲栽培の農薬散布を楽にしたいという思いからドローンの免許を取得され、自身の田んぼだけでなくドローンの操縦者として紀の川市中の水田への農薬の空中散布を行っています。

ドローンを使って水稲に農薬を空中散布する様子ドローンを使って水稲に農薬を空中散布する様子

ヒナイグリーン®を用いたイチジクの栽培試験への挑戦

神德さんが紀の川市役所の担当者の方から声をかけられたのは2月のこと。近畿大学と紀の川市役所が結ぶ包括連携協定に基づいた取り組みの一つとして、ヒナイグリーン®を用いた果樹の栽培試験の実施が決定した後、市役所の方に協力していただける農家さんを探していただいた中で、手を挙げていただいた一人が神德さんでした。
今回のお話があるまでヒナイグリーン®を知らなかった神德さんですが、栽培試験を説明させていただいたところ「使ってみないと良いかどうか分からないから、やってみようか」と引き受けて下さいました。また農家さんを探していただいた市役所の方からは「ヒナイグリーン®が農薬や化学肥料とは違って山から採れる天然の石なので作物に悪い影響は出ないだろうから声をかけやすかった」と言っていただけました。

イチジクの生長を観察する神德さん(左)と弊社研究員(右イチジクの生長を観察する神德さん(左)と弊社研究員(右)

栽培試験の実施が決定した後、神德さん、紀の川市役所、近畿大学、弊社の四者でイチジクの栽培試験についての話し合いを3月に行い、同月末から栽培試験をスタートしました。
イチジクの木を増やす時は一般的に穂木と呼ばれるイチジクの枝を土に挿します。これを育てると土の中に埋まった穂木の切り口から根が、土から出ている芽からは枝葉が出てきます。そしてゆくゆくは大きなイチジクの木となりイチジクの実をつけます。今回の栽培試験ではイチジクの穂木を育てる時の土にヒナイグリーン®を混ぜることで生長が良くなるのかを検証しました。

ヒナイグリーン®の効果

ヒナイグリーン®をご使用された農家の方々からいただく感想で多いのが『ヒナイグリーン®を使って野菜を育てると根の張りが良くなる』ということです。今回のイチジクは野菜ではなく果樹ですが、穂木という葉も根もない状態から大きな木に育っていくには栄養を吸収するための根を伸ばすことが重要になります。ヒナイグリーン®のもつ根張りを良くする効果を穂木の生長に活かすことが出来れば、イチジクの穂木を早く大きく育てることが出来ます。

栽培試験は神德さんが一年前に剪定し保管しておいたイチジクの枝を切り、穂木を用意するところから始まりました。穂木を用意した後は、赤玉土と堆肥を混ぜ合わせて穂木を植えるための培養土を作りました。さらに培養土にヒナイグリーン®1mmアンダーを5%(10 kgの土に500 g)加えて混ぜることでヒナイグリーン®入りの培養土を作製しました。このヒナイグリーン®入りの培養土をポットに分注し、イチジクの穂木を挿しました。また生長差を比較するためにヒナイグリーン®を加えていない培養土だけの対照区も用意し、イチジク穂木の栽培試験を開始しました。

イチジクを挿し木して育てるための土にヒナイグリーン®1mmアンダーを混和イチジクを挿し木して育てるための土にヒナイグリーン®1mmアンダーを混和

こまめに水をやりながらポットに植えたイチジクの穂木を育てました。育て始めて1か月ほどでイチジクの芽から葉が出てきました(写真上)。この段階ではヒナイグリーン®を入れた効果はまだ表れていません。栽培を続けて2か月が経つころ、イチジクの葉が段々と大きくなってきました(写真下)。そしてヒナイグリーン®を入れた培養土で育てている一部のイチジクでは葉が対照区より少し大きく育つ傾向が認められました。

栽培試験1カ月後(左)と2カ月後(右)のイチジクの様子。各写真の左側半分のポットの土にはヒナイグリーン®が混和されている。右側のポットの土にヒナイグリーン®は入っていない栽培試験1カ月後(上)と2カ月後(下)のイチジクの様子。各写真の左側半分のポットの土にはヒナイグリーン®が混和されている。右側のポットの土にヒナイグリーン®は入っていない

その後も栽培を続け、5カ月経ったイチジクがこちらになります。植えた直後は枝も葉も無かったイチジクから新しい枝が伸び、多くの葉も出て大きく育っています。ではヒナイグリーン®を培養土に混ぜた効果はどうでしょうか。左側のヒナイグリーン®が入っているポットのイチジクでは、右側のヒナイグリーン®が入っていないポットよりも大きく育ちました。またヒナイグリーン®区のイチジクでは葉が大きくなり、背丈も高くなっていることが観察できます。

栽培5カ月後のイチジク。左側はヒナイグリーン®あり、右側はヒナイグリーン®なし栽培5カ月後のイチジク。左側はヒナイグリーン®あり、右側はヒナイグリーン®なし

8カ月経ち、冬になり大部分の葉が落ちました。これまでは葉で覆われていて隠れていた枝が見えやすくなりました。そこで穂木から新しく伸びた枝の長さを測定しました。その結果、ヒナイグリーン®を入れずに育てた対照区のイチジクでは枝の平均長が22 cmだったのに対し、ヒナイグリーン®を入れたものでは28 cmと27%も枝が伸びていることが分かりました。つまりヒナイグリーン®を培養土に混ぜるだけでイチジクの穂木を大きく育てることが出来るということが分かりました。

栽培8カ月後のイチジクの枝の⾧さ栽培8カ月後のイチジクの枝の⾧さ

栽培試験の今後

今回の試験によりヒナイグリーン®を使うことでイチジクの苗木を大きく育てることが出来るという効果が観察されました。今後、この苗木を植え替える際に根の観察を行うことで、ヒナイグリーン®の根を伸ばす効果がイチジクでも表れているのか、枝葉が大きく育ったのは根の張りが良くなったからなのか、確認する予定です。今後の成果にご注目下さい。

2021/01/12  |  文:江邉 正平(研究員)



「紀の川市」


紀の川市

紀の川市は、北に和泉山脈、南に紀伊山地を控え、東西に清流・紀の川が流れています。南からは貴志川が合流し、豊かな水辺環境と調和した街並みが形成されています。

豊かな水資源と温暖な気候が農作物を育み、フルーツの生産が盛んです。モモ、イチゴ、ハッサク、イチジク、キウイフルーツは県内一の生産量を誇り、他にウンシュウミカン、ウメ、カキなど、豊富な種類のフルーツが栽培されています。タマネギ、ナスなどの野菜や花卉栽培も盛んで、葉ボタンの生産は日本一となっています。市内には近畿大学生物理工学部が立地し、官学連携にも注力しています。

※写真の一部は紀の川市役所の方に提供していただきました。ありがとうございました。